YouTubeの動画を作っていると山の名前をアルファベットで表現したい時がありますが、日本語→英語(アルファベット)について明確なルールが見つけられず、これまでは自分で勝手に以下のルールを決めていました。

<マイルール>
 Mt.+山や岳などを含む山名のローマ字
  但し、富士山→Mt.Fuji は広く認知されていると思われるので例外。

理由としては、
①「山」とか「岳」とかは日本語として意味を持つようである。
②例えば「山」と書いても「やま」なのか「さん」なのか読み方が違う場合がある。
③上記で例外とした富士山のような表記をした場合、意味の分からない山名に場合が往々にしてある。
 例)月山→Mt.Gas? Gatsu?、蝶ヶ岳→Mt.Cho? Mt.Chouga???、大山(おおやま)→Mt.Oo!?

ところが最近になって、国土地理院の”地名等の英語表記規定”なるものを目にしたので読んでみました。(この規定名称でググればすぐ引っかかります。)

ただ、あくまで国土地理院(国土交通省)の規定なので、英語(アルファベット)としてどうなの?とか国土地理院地図で表現されないような領域はどうなの?とかいう点でしっくりこない点が無い訳ではありませんが、山名に限って言えば拠り所にはなりそうです。では、規定の中身を見て行きたいと思います。

(関連するリンクは記事の最後にまとめて貼っておきます。)

1.国土地理院「地名等の英語表記規定H28年3月版」の中身

青文字部分が”地名等の英語表記規定”からの引用個所となります。引用するのは山名等だけに絞ります。これによると、

地形の種別標準的な漢字標準的な読み地形を表す英語地形を表す英語の配置位置
やま、さん、ざんMt.先頭(Mt.〇〇)
岳(嶽)たけ、だけMt.先頭(Mt.〇〇)

という事で、まずはマイルールは早速否定されてしまいました(笑)
そうは言っても、それだけじゃねぇ、、と思って読み進めるとさすがお役所。少々細かくなりますが、主な内容を紹介していきます。

地形の種別地形を表す英語表記例
山脈Mountain Range
(略称 MtR.)
奥羽山脈(おううさんみゃく)Ou Mountain Range
山地、 高地、 連山Mountains
(略称 Mts)
四国山地(しこくさんち)Shikoku Mountains

また上記に加えて例外措置的に追加方式・置換方式と言うものが規定されており、追加方式とは日本語名にMt.を付加する、置換方式とはMt.を付けて日本語名の山や岳を取り払う方式で、ここが肝になるかと思います。

一 地形を表す部分が標準的な漢字及び読みに該当しない場合(追加方式)
 例:安家森(あっかもり)Mt. Akkamori、大山(だいせん)Mt. Daisen

二 地形を表す部分の直前に促音がある場合(追加方式)
 例:月山(がっさん)Mt. Gassan

三 地形を表す部分の直前に助字(平仮名表記でのみ現れる場合も含む)がある場合(追加方式)
 例:八ヶ岳Mt. Yatsugatake

また、 前項に該当しない場合

一 固有名詞的部分の読みが1音拍の場合(追加方式)
 例:恵山(えさん)Mt. Esan、眉山(びざん)Mt. Bizan

二 固有名詞的部分の読みが2音拍で漢字1文字の場合(追加方式)
 例:立山(たてやま)Mt. Tateyama、白山(はくさん)Mt. Hakusan、渋峠(しぶとうげ)Shibutoge Pass

三 固有名詞的部分の読みが2音拍で漢字1文字でない場合(漢字2文字、平仮名2文字及び片仮名2文字)で、山、湖及び岬(地形を表す英語が先頭に付くもの)の場合(追加方式)
 例:加波山(かばさん)Mt.Kabasan、万年山(はねやま)Mt. Haneyama 祖母山(そぼさん)Mt.Sobosan、爺爺岳(ちゃちゃだけ)Mt. Chachadake
イ 固有名詞的部分のみで山又は山域を指す場合(置換方式)
  例:富士山Mt. Fuji、阿蘇山Mt. Aso、那須岳Mt. Nasu(那須町)、 那智山Mt. Nachi(那智勝浦町)
ロ 固有名詞的部分が近隣で他の自然地名、地域名、居住地名及び公共施設名等に使用されている場合(置換方式)

五 固有名詞的部分の読みが3音拍以上の場合(置換方式)
 例:雲取山(くもとりやま)Mt. Kumotori、開聞岳(かいもんだけ)Mt. Kaimon、 剣山(つるぎさん)、剱岳(つるぎだけ)はいずれもMt. Tsurugi
ただし、複合地名(地域名称等が先頭に付く地名)の場合や東、西、南及び北並びに上、中及び下並びに新、旧及び元等の接頭語が付く場合
 例:昭和新山 Mt. Showa-Shinzan 昭和+新山(しんざん)に分解し、二号適用、能郷白山 Mt. Nogo-Hakusan 能郷+白山(はくさん)に分解し、二号適用、西吾妻山 Mt. Nishi-Azuma 西+吾妻山(あずまやま)に分解し、五号適用、旧江戸川 Kyu-Edogawa River 旧+江戸川(えどがわ)に分解し、四号適用、元荒川 Moto-Arakawa River 元+荒川(あらかわ)に分解し、二号を適用、
また、地名全体が一体のものとして通用しており、置換方式による英語表記を元の日本語の地名に変換することが困難と考えられる場合(追加方式) 例:東西南北などの方位を表す語は地形を表す語と結びつきが強いので追加方式。 東山(ひがしやま)Mt. Higashiyama

だそうです。多分パブコメみたいなモノも含めて**方式で反映しているのかと思われますが、これで全てかと言われると、判断付きませんが多分そうなのでしょう。

でもいつもこの内容を読み返して国土地理院の規則に則った表記を考えるのはメンドクサイですよね。で、先に言えよ!とお叱りを頂きそうですが、電子国土で多言語版の地図が公開されているので、国土地理院の規定をベースとした英語(ローマ字)表記を確認したい場合は、こちらで確認するのが一番確実で早いと思われます。

<国土地理院 電子国土 英語版>
https://maps.gsi.go.jp/multil/index.html#10/36.065197/138.604889/&base=pale2&ls=pale2%7Chillshademap%2C0.1%7Cchuki_eng&blend=0&disp=111&lcd=chuki_eng&vs=c1

2.土地の管理組織(地方自治体など)の実際の対応も幾つか見てみる

とは言え、地図を作る立場(だと思っている)の国土地理院(国土交通省)と土地の管理組織(地方自治体やそれらの関連組織)が英語で表記したいと思う動機は一致しないと思うので、ここには当然様々な矛盾があると想像されますね。幾つかの山域の例を見てみたいと思います。

まずは、現地で至るところに英語表記があって、英語のパンフレットなども充実している富士山について見てみます。

2.1 富士山

国土地理院地図
Mt.Fujiは火口の底にプロットされていることもあり、山体?山域?として表現されているようです。剣ヶ峰はMt.Kengamine、白山岳はMt.Hakusanとそれぞれ記載されています。

富士山における適正利用推進協議会
富士登山オフィシャルサイトの英語パンフレットでは、Mt.Fujiという表現はやはり山全体を表していると思われますが、剣ヶ峰、白山岳についてはKengamine Peak、Hakusandake Peakと表現されています。自治体側の気持ちはなんとなく理解できる気がします。

次に鳥海山の例を見てみたいと思います。

2.2 鳥海山

国土地理院地図
”Mt.Chokai”はやはりMountainsではないんですね。山体?山域?として表現されているようです。それとは別にピークを示す新山や七高山が合わせて記載されています。(余談ですがMt.ChokaiはMt.Fujiよりフォントが大きい気がします。気になります。。)

鳥海国定公園 鳥海山登山道案内図(山形県)
ちょっと見難くて恐縮ですが、新山はShinzan Mountain、七高山はMt.Shichikoと表現されています。鳥海山登山道案内図はChokaisan Area Guide Mapと表現されています。

富士山のパンフレットの英語はなんとなく自治体の想いを推し量ることが出来る気がしますが、こちらの表記は解釈が難しい感じを受けます。

という事で、自治体等が作成するこれら登山に関する情報は国土地理院の規定に沿うというよりは、独自ルールを持っているように思われます。

ちなみに、丹沢山塊(山地?)はTanzawa Mountainsかなと思って探しましたが、私の見た限りでは電子国土ではこの表記は見当たりませんでした。富士山や鳥海山はMt.~で記載がありますが。じゃぁ山地や山塊って何だろうな見たいな、、、疑問は尽きませんが、なんだか別の分野にまで話が飛んでいきそうなので、この辺でやめておきます(笑)

3.まとめ

ずっと以前から、どこの山に登っても指道標(環境省?林野庁?地方自治体?その他の団体?)や現地案内板に記載されいてるローマ字表記がなとなく気になっていて、何が正しのかいつもモヤモヤしていたのですが、正解はない事を再認識したというお話でした。でも国土地理院地図の英語版は困った時の拠り所にはなりそうなので、個人的には少し安心しました。ただ、個人的な感覚では???な表現もあったりする訳で、場合によって適当にアレンジしちゃおうかな、、、なんて気持ちです。

ちなみに、車を運転しているとよく見かける県境や河川の看板、これらの固有名詞の英語表現も以前から気になる存在たっだのですが、今回この規定を見たことでこれらに対する表現のモヤモヤも解消されたかもしれません。

この記事で書いた内容について、その他の情報や追加情報があれば教えて頂けたら嬉しいです。

<富士登山オフィシャルサイト>
http://www.fujisan-climb.jp/index.html

<富士登山英語パンフレット>
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/http://www.fujisan-climb.jp/en/kjhqgg0000002r95-att/Fujinomiya_info2018_en.pdf

<国土地理院電子国土>
http://maps.gsi.go.jp/#15/35.972102/138.368146/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

<国土地理院 電子国土 英語版>
https://maps.gsi.go.jp/multil/index.html#10/36.065197/138.604889/&base=pale2&ls=pale2%7Chillshademap%2C0.1%7Cchuki_eng&blend=0&disp=111&lcd=chuki_eng&vs=c1

最後まで読んで頂きありがとうございます!